京都便利堂にて

今回テストしたClarence Whiteのイメージ。Photo by Robin Tsukada
今回の滞在中は山本さんが出張という事で、主に加藤さんと一緒にデジタルネガのテストの作業を進めていく
加藤さんは、もともと便利堂の中でオフセットを担当していたので、プリントの作業を数値化していくというのは比較的に感覚として分かりやすいのではということである。先週、アンドレアと一緒に便利堂を訪れた時に山本さんに紹介してもらい、今回付きっきりでQTRの仕組みなどを説明していった。
1日目は会社に着いた時には既に夕方になっていたので、とにかく朝クボさんの所でプリントアウトしたネガを渡し製版をしてもらう。先週からチャートを刷るのを担当している竹内さんや、製版を長く担当している中沢さんも会議に加わり、いかにコロタイプを刷っていく過程で,いろいろな要素があるのかという事を説明してもらう。普段印刷している人の間で使っている,ボキャボラリーや感覚に慣れるために、写真的な観念に置き換えたり、その仕組みを分かる為に気になる言葉を一つ一つ確認していく。
2日目は翌日に作った版を使い実際に印刷をしていく。竹内さんと加藤さんが一緒になりコロ機を動かし、用意された一つの版から一回刷と二回刷りのテストを刷っていく。先週のテストからカーブをはじき出したが,それは二回刷の物で行った。便利堂では数物をする時は二回刷りするのが当たり前になっているようで、これがコロタイプの宿命的な物であると説明をうけた。オフセットとは違い、最初に刷った物と200枚目に刷られた物ではかなりの濃度差が出るようで、これを順序逆に二度刷る事によって平均化しているのである。
竹内さんが作業を進めていく途中にどのような版が刷りやすいかという事を説明してくれる。乾いている版を水とグリセリンに浸けておくのだが,そのぬめり具合などを確認しながら版の具合を確認していく。どれ位固いインクが入り易いかという事で実際に印刷の善し悪しが決まる。そして実際にインクを入れてみて,その入り具合に寄って実際に刷る時にどのようにしていくかという事を決めるようだ。そしてインクの固さやそして版の濡れ具合に寄って,実際のプリントの濃度がどんどん変わっていく。今回のテストでは一つの版から多くても20枚位しか刷らなかったが,版画使われていく度に版の状況が変わり、それを判断し印刷する人がいろいろな方法で仕上がりを一定にするというものである。
この様に細かい説明を聞いていくと、あまりにもプリントの時点で自由自在に操る事ができ、このようにチャートを作っていく事すら意味のない様に聞こえてくる事が多々あるが、逆に言うといかに版の出来上がりにバラ付きがあり,印刷の時点でその版を補う様にプリントをしているかということがわかる。プラチナプリントする人のネガの調子にバラつきがあり、プリントの時点で露光時間やコントラストを変え悪戦苦闘しているという事と変わりはない。今回この様に話しを聞けば聞くほど、いかに安定した版を作るという事が大切で,それができていればある程度反復性のあるプロセスだという事がわかった。
3日目の午前中は、写真部の岩村さんも加わり、印刷された物をスキャンして実際のチャートのずれをまた見ていく。そのずれからトーンカーブをはじき出す事も説明する。実際にスキャンをして,いちいちグレーの数値を読み込んでいく作業である。最近知った方法でこのプロセスを自動化するスクリプトこのとを話したり,後は二つのトーンカーブを一つにまとめる方法なども紹介する。正直言ってフォトショップは普段から使っている人ほど熟知している訳ではないが、要所要所でこの様に便利な方法を押さえる為に常に情報を吸収している。
今回のテストの結果を見て,山本さんも早速プリンターを購入するという事を決めた。かなり期待ができるのでないかと思ってくれたようだ。今回この様にデジタルネガを使うようすると大きく3つの利点がある。まずはできてくる版が安定して,印刷の時点で苦労しなくてもいいという事。これは時間短縮につながり、もう少しコストパフォーマンスが高くなるだろう。そしてこの様にデジタルファイルで入稿できる様になると,世界から受注できる様になる。今までオリジナルを撮影するしか方法がなかったが今回の方法でその過程を省くことができる。これは新しいマーケットを開拓していくにはどうしても必要な事である。
そして、自分として興味があった所として、作業過程のいろんな条件を数値化して知ることができるという事である。今まで職人さん達が感覚的に分かっている事は経験上のカンでしか分からなかったのだが、その感覚を数値化する事によってもっと裏付けのある物にしたいと考えた。職人さんの感覚をいかに理解して,数値に置き換えられるか,又は置き換えられないかという事を見極めることができないかという思いがあり、先週山本さんに会い話しをした時にもコロタイプを作る過程でどのような不確定要素があるのか、そしてどれ位の変化をもたらすかという事を、夜居酒屋にいる短い時間で、自分なりに理解しようとした。もちろんコロタイプを長い間やっている訳ではないので,細かい所まで理解する事は到底無理であるが、今までいろんなオルタナティブプロセスをやってきた僕なりに提案できるものはある。
今回のテストでは時間がなかったが次回は使うdichromateを変えて階調をもっと広くすることができるか是非試してみたい。基本的にはammonium dichromateの方がコントラストが低く感光性が高いので、この辺はテストをする価値があると、素人ながら思う。この辺はこの秋にゴム印画などでテストをして,実際にできた物を見せる事によって,山本さんの協力を得たいと思っている。
この様にお互いの持っているノウハウを生かし、より高画質のそして合理化されたコロタイプを作りたいと思っている。と同時にコロタイプの新しい利用方法を色々模索して行きたい。

仕上がりを確認する竹内さん。Photo by Robin Tsukada



