フィラデルフィア写真紀行

写真センターの運営や作家活動から、アメリカの写真事情や文化の違いまで…

緑に囲まれて

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Gravureの銅板

夜中の3時に目が覚める。今夜はどうしてか寝付けない。

窓の外は一晩中虫の音が聞こえ、たまに走り去る車の音以外には全く静かである。唯一の外灯が映し出している木の影がシーツの上にきれいな模様を作っている。携帯の電波も届かず、そしてインターネットもなく全く外界から切り離され、この緑に囲まれた場所で2−3日を過ごしてきた。

マサチューセッツにあるWilliamsburgという小さな町に泊まっている。フィラデルフィアから車で4−5時間位離れた所であろうか,実際は電車とバスを使ってきた為6時間位かかった。今回は久保さんとJon GoodmanのスタジオでPhotogravureのワークショップを受けるのが目的でここまで来た。町の中心に小さなお店が数件と図書館と銀行が一つある本当に小さな町である。人口は3000人位だとJonが言っていた。

こんなにフィラデルフィアの生活と離れた様な旅行はとても久しい。久保さんがアメリカに来る前にスカイプで,今回の旅行はあまりにも繋がらない旅になるとは伝えておいたが,実際にこうして体験してみるといかに自分の生活がスタジオとのやり取りで成り立っている事を実感する。

日本にいる時などは距離的には離れているが,実際の連絡はとても身近かである。実際夜中にチャットの音で起こされる事が頻繁にあるくらいである。もちろんそれくらいにしていかないとスタジオに残っているスタッフが困ると思っているのだが,今よく考えるとあまりにも近すぎる。実際にこんなに繋がっている事が必要なのかどうかが疑わしいし、なぜコンピューターを切るという事ができないのであろうか?

この頃スタッフの人達と一緒に毎日の時間をどのように過ごしているかという事を時間単位で記録している。いろいろな種類の仕事をしている為、どんな仕事にどれ位時間をかけているかという事を把握するのが目的である。そしてその記録を元に、仕事の内容と割り当てる時間を決めたスケジュールを作れないかと考えている。細かく分散化された仕事や周りからの連絡でやらなければいけない事ををまとめる事によってもう少し効率をよくするのと、一つの作業に集中して取り組める時間を作ろうとしている。

そして一日に2−3時間は電話やメールでの連絡を意識的に切り、決めた作業に集中するという事も行ってみようかと思う。最近は電話の数もスタジオに訪れる人も少しずつ増えてきている為、その対応にスタッフの時間が費やされてしまう。もちろん当たり前の話しではあるが、もう少し入ってくる連絡に秩序付ける事によって集中できる時間を少しでも守りたいと思う。

最近アメリカではインターネットやコンピューターや電話が小さくなり日常の生活のなかで切り離せなくなってきている状況に問題を投げかける記事や本をよく見る様になってきた。基本的な社会的エチケットことから実際に人間の脳の使われ方が変わってきているということまで問題は幅広い。そしてこんな現代の生活の中心にはマルチタスクや作業能率に対するある種の信仰がある。

しかし実際には人間の脳は一度に一つの作業しか集中できず、マルチタスクすることによって自分の判断力が鈍っているという事はいろんな研究で明らかになっている事である。そして情報がいろんな形で入ってくるのに集中している為,一つの事に集中できなかったり,物事について深く考えるということができなくなっているようだ。

スタジオにいるスタッフやボランティアの人達の行動や文章を見ていると、物事に集中できていないかということが気になる。そして自分の行動もよく考えるといろんな事に考えや目がいき集中できていない事にも気が付く。とにかくそんな所から変えていきたいと思っている。

Jonがプレートをエッチングしている時に、どんなに急いでいても一つずつしかエッチングをしない事がルールで、時間を短縮する為のいろいろな方法は最終的には時間を短縮していないという彼の経験から来ている言葉が印象に残っている。根本的な問題とは考えるほどもっと身近なのだろう。

Written by tsuyoshi

6月 20th, 2010 at 12:24 pm

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