フィラデルフィア写真紀行

写真センターの運営や作家活動から、アメリカの写真事情や文化の違いまで…

Form and Content

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写真やアートを見る時に、ただ漠然と見るよりは何らかの「物差し」があると見ているものに対する評価が具体的になっていく。そして具体的になっていくと、感覚や感性などという主観だけでなく、客観的に比較する事ができ、全く違った感覚を持っている人とも理解を共有できるようになる。

その「物差し」となるのが、Form&Contentである。この見方を最初に学んだのは、10年も前に参加したAndrea Modicaのワークショップだった。

FormとContentというのは、色々なアートを批評するのに日常使われている「物差し」のひとつである。Contentというのは「内容」を意味し、写真の場合には実際に写っているものである。Formというのはその「内容」を写真の構造上、そして視覚的に支えているもので、例えば、構図・フレーミングやプリントの仕方などである。これらはどのように内容を「見せているか」ということ全般に関わる。

このように説明をすると少し話が難しくなるので、クラスを教えている時などは「what」と「how」に分けて話をする。「what」というのが内容であり、「なに」が写っているのか、そして「how」は方法であり、「どう」写っているのかを指すのだと簡単に説明をする。そうすると少し取っ付きやすくなるようだ。

「what」の極端で典型的な例として報道写真がある。報道写真は、実際の「内容/content/what」が見る人に分かる程度写っていれば成立することが多い。つまり、内容の持っている「力」があまりにも大きい為、実際にどう撮られたのかが影響を及ぼすことが少ない。

典型的な「how」の写真の例はなかなかないのだが、例えばアート写真が挙げられるだろう。最近亡くなった人だが、Jan Grooverという写真家がいる。彼女の代表的な作品はキッチンにあるものを撮った静物写真である。このような写真を見ると、内容はともかく、構図、光、色など、写真家が「どう撮った/form/how」ということが重要になってくる。ある意味「内容が無い」写真といっても過言ではない。

このように、「what」と「how」の写真は対局するものなのであるが、それを0から10までのスケールにしてどちらの比重が大きいのかと考えると分かりやすい。白黒はっきりするというのではなく、どちらの方に近いかとという感覚である。

そして「いい写真/成功している写真」というのは、このFormとContentのバランスがとれているもの、つまりスケールの5に当たるものである。被写体の力だけでなく、また写真家が決定する方法だけではなく、両方のバランスがとれていて、お互いの関係がうまく作用した写真のことを指す。

このようなスケールで写真をみると、その写真の「方向性」が見えてくる。自分の写真が客観的に「どちらに偏っているのか」が分かり、何が足りないのかを意識できる。もちろん先程の報道写真やJan Grooverの写真は極端な例であり、実際には中間のどこかに収まる写真の方が多いであろう。

毎回初心者のクラスで説明することだが、写真というのはもともとカメラの前にあるものを「正確に」描写するため、「what」というのは大概の場合は問題なく存在している。ただ、その「正確な描写」だけに頼るところが多く、実際にどのように撮ったら効果的かという部分まで考えが及ばない写真が歴史的にみてもほとんどであるというのが問題なのだ。家族旅行の写真(英語でいうsnap写真)や何かの記録の為に撮った写真(documentation)はこの類に入る。もちろん全ての写真がFormとContentのバランスをとる必要などは無く、それそれでその写真の役割を果たしていればいいと思う。

しかし写真を使って「作品」などを作っている場合はまた違い、このようなクリティカルな考え方や見方がとても重要になってくる。まずは自分の写真や他の人の写真を見る時に0から10のスケールに入るのか考えてみることが良いトレーニングになると思う。そしてどのような「要素/element」がどちらに属するのかということをリストアップしていくともっと明確になるだろう。

このような方法で今までぼやっとしていたものに輪郭をつけると、いろいろなレベルでの理解に繋がるのではないか。今まで好きか嫌いかの主観でしか話せなかったことを、もっと「建設的/constructive」に話せるようになると思う。

写真やアートを見る時にただ漠然と見るよりは何らかの「物差し」があると見ているものの評価が具体的になっていく。そして具来的になっていくと感覚や感性などという主観だけでなく、客観的に比べる事ができそして理解を全く違った感覚を持っている人とも共有できる。

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Written by tsuyoshi

1月 26th, 2012 at 8:10 am

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