フィラデルフィア写真紀行

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銀塩用のデジタルネガ作成

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デジタルネガからの銀塩プリントのディテール

今週はChristineと一緒に銀塩用のデジタルネガを作るプロジェクトを進める。

現在使っている方法はQTRという白黒インクジェットプリント用のドライバーを使って、各プロセスに合わせたプロファイルを作り、適正なネガを作っている。利点として従来の方法に比べて細かい調整ができ、一度理解すると自分の環境に合わせた完成度が高いプロファイルを作る事ができる。

今までこの方法でプラチナプリントなどを含むオルタナティブプロセス向けにデジタルネガを作ってきたしワークショップでも使ってきた。現在アメリカでオルタナティブプロセスを行っている人はかなりの割合でデジタルネガからプリントをしている人が存在し、この数年で本当に定着した手法である。実際に周りにはデジタルネガがきっかけで、一昔までUltra Large Formatと言われる8×10以上のカメラを使っていた人が少なくなってきたのは確かである。

今回のテストプリントのスキャン

日本でも最近になってナガシマさんとこのネガに使うフィルムの販売元のピクトリコが一緒になって銀塩用のデジネガを手軽にできるように環境づくりを始めたようだ。ICCプロファイルとして用意され、ダウンロードできるようになっている。まだプロファイルを試した訳ではないが、DGSMという名前のもので実際にプリントを見せてもらった時には全く使える位の仕上がりになっていた。

前々からクボさんと銀塩用にできると応用が広がるのではないかと話をしていたが,なかなか実際にテストをするまでの時間ができなかった。ここになって銀塩用のプロファイルを作る事を集中してやってみることにする。このようなことをワークショップなどで教えていくと技術的に優れている人はどんどん自分なりにいい方法を見つけていくだろう。

一年位前に一連のテストを行ったのだが、その時いくつかの問題点が上がっていた。一つ大きな問題としてプリンターの粒状性が気になっていた。普段作るデジタルネガは主に3つのインク(K, LK, LLK)から成り立っていてこの3つのインクの突出量と各インクを切り替える時点をコントロールして階調を作っていく。オルタナティブプロセスに使う紙は基本的に西洋紙で表面が荒く解像度が高くないので,基本的にはこの時点でプラチナプリントなどは十分である。しかしバリウムのコーティングがしてあるバライタ紙にプリントするとかなり目立ってくる。

2日目を終わってこの3つのインクだけで基本的には整ったプロファイルができていく。しかし拡大したスキャンを見てみるとわかるが、プリンターのヘッダーの後が残っているのがわかる。この問題を解決する為にインク間のドットの隙間を埋める為に他のインクの色が必要になっていく。後数回繰り返していくと,実際に使えるレベルの物ができそうである。

そして、これができると光源を変えたり、他の紙にしてみたりとプロセスのほうの要素を変えて実験してみたい。特定の印画紙、光源、そしてプリンターの組み合わせでできたプロファイルがどこまでの許容範囲を持っているのかという事を調べたいと思う。

Christineは今週末から実家に帰る為次のテストは4月に入ってからということになりそうだ。

Written by tsuyoshi

3月 23rd, 2012 at 11:11 pm

Posted in デジタルネガ

9 Responses to '銀塩用のデジタルネガ作成'

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  1. 伊藤さま、こんにちは。
    3年前にデジタルネガからのプラチナプリントのワークショップを受講してからすっかりデジタルネガにはまっています、熊谷です。

    プラチナのほうは僕もはじめから全部出来る様になりました。QuadToneRIPのプロファイルも満足いくものとなりました。

    最近銀塩も始めました。ただうまくいっていません。同様に筋状の痕跡が出るのと、粒状感がもろに出てしまいます。筋状のムラはQTRの印刷品質の限界であるらしく、エプソン純正ドライバーでプリントすると改善されました。ただエプソンドライバーですと、インクの使い方まではカスタマイズできないのでシャドーが潰れやすく、印画紙の最大濃度をあきらめることになりそうです。

    現行のQTRは印刷品質が低くそろそろ限界に来ているようにも思います。実はベースになっているGIMP Printは進歩していて(現在Guten-Print)5760dpiの解像度や、Ultra Photo modeなどが選択できて純正ドライバーに遜色ないようになってきておりますが、Roy氏にそのことを尋ねましたところ、そのことを実装した上でのQTRのバージョンアップは非常に困難だと返答を受けました。

    とうところで、永島さんが開発されているDGSM Printの方に舵を切るか、QTRにとどまってがんばるか、思案しているところであります。

    熊谷

    25 3月 12 at 1:13 AM

  2. クマガヤさん、

    僕もQTRが純正のdither patternを使っていないというのが問題であるのではないかと薄々思っていました。QTRで各色のインクのテストをすると一目瞭然でした。さすがにここは個人で開発しているので難しい所ですね。

    現在2つほど考えています。

    1) そのテストをするとYがかなりいい具合でグレーチャートを滑らかにしています。そこでYを混ぜてまたは主なインク一つとして使い、この特性を利用できないかと思っています。

    いつもK、LK、LLKを主に使っているのでそこを例えばK、LK&Y、LLKにできないかと。

    2) Ron Reederの本にも載っている方法で、純正のドライバーを使った方法でもテストを進めています。黒くつぶれる所はカーブで補正するようにしています。

    どうでしょう?

    tsuyoshi

    25 3月 12 at 7:57 AM

  3. 伊藤さんに言われて気づきました。たしかにYインクのみ他と特性が異なりますね。ある程度の濃度になるとそれ以上プリントは白くならない…
    滑らかにする為にベースに使用することが出来るかもしれませんね。

    Ron Reeder氏の本も最近見直していたら純正ドライバーのYインク使用の手法が面白かったです。ベースにするトーンカーブ+微調整用のトーンカーですね!

    私の場合はおそらく露光時間が長すぎるようで、シャドーのつぶれがトーンカーブでの補正の限界にきてしまうようなので、もう一度いちからやり直しです。現像液なんかも数日使いまわしたせい等もあるかもしれません。

    熊谷

    熊谷

    25 3月 12 at 10:18 AM

  4. クマガヤさん、

    黄色はマルチコントラストの紙を使う時には少し厄介な色です。銀塩の印画紙に対して、黄色の濃度を上げれば上げるほど、コントラストが下がってきます。ですので上のチャートを見ると分かるようにある程度の濃度が上がるとコントラストが下がり違いが分からなくなります。

    ただその分しっかり元になるインク、例えばLKなどが主となってlinerizationができていれば、滑らかにするという役割だけに利用できるのではないかと考えています。後は実際にテストをしてみないと分かりません。

    クマガヤさんがとったワークショップで教えた方法はもともとRon Reederの方法なのですが、今はうちのスタジオでデジタルネガのワークショップを教えている、Clay Harmonの方法を使っています。

    彼の方法が書かれたPDFがあるので,是非参考にして下さい。露出時間のテストから、WindowsのQTRの利用方法までとても詳しく「理論的」に説明されています。

    プロファイルを作る時の薬品はいつも新しい物を使った方がいいです!

    tsuyoshi

    25 3月 12 at 10:51 AM

  5. PDF参考になりました。QuadToneRIPの“Calibration.pdf”にて説明されている、インクの最大濃度が次に濃いインクの何%に当たるかを調べて、“Density”のパラメーターに記載していく方法ですね。これなら理論的ですね。

    実は私はこの手法を究極化させて、8種類のインク全てを使うK8プロファイルを試しました。けど、うまくいかなかったので、結局は、K4(4つの山になる)プロファイルに落ち着きました。
    http://www.digital-negatives.jp/bb/phpBB3/viewtopic.php?f=2&t=12

    ですが、そのK8プロファイルのうまくいかなかった部分というのは今気づきましたが、Yインクのパートだったのです。Yインクを外せばいけるかもしれません。Yインクだけ特性が違うのでしょうか?

    まぁ上記の話は極端な話でしたが、使える最近の話として、私はキャリブレーションは従来のトーンカーブ方式をやめて、“LINEARIZEパラメーター”を使うようになりました。EyeOneなどの測定器も使えるのが利点です。最新のバージョンアップ(2.72)でこっそりRoyが仕組ませてくれたのですが、しっかりアナウンスされていないのでデジタルネガユーザーには届いていないかもしれません。
    http://www.digital-negatives.jp/blog/?p=889

    熊谷

    熊谷

    26 3月 12 at 8:55 AM

  6. 現在のテストと同時に進めようと思っているのが3つあります:

    1. Epsonのドライバーによる方法
    2. ICC profileの作り方
    3. HPのプリンターによる作り方

    友達がプリンターを早速買う様なので、違ったプリンターでもテストをしたいと思います。以下にサイトでの情報が載っています。

    HP Z3200

    tsuyoshi

    3 4月 12 at 6:29 AM

  7. 伊藤さま

    あれから色々とテストをし、QuadToneRIPに関しては、印刷品質に問題があり、銀塩では写真の内容によっては使用に耐えないと結論に至りました。

    Yインクを混合することで粒状性が大幅に改善されましたが、ヘッドの動き方向によるスジは取れませんでした。
    http://www.digital-negatives.jp/bb/phpBB3/viewtopic.php?f=16&t=35#p655

    米国ではPiezographyなど、銀塩のデジタルネガ利用が進んでいるようですが、本当にQuadToneRIPの印刷品質で満足するプリントが得られているのか疑問です(QTRのウィービングの問題はインクの種類によらず起きていると思うからです)。

    エプソンドライバーからプリントする方法も試していますが、Yインクの混ぜ方が足りないのか中間調で粒状性が悪化します。スジは発生していません。ただトーンカーブでの補正が一発では出来ず、2回目から微調整を試みているのですが、それがもくろみ通りにならず困ってしまいました。純正ドライバー+トーンカーブ方式は階調を出すのがやはり困難で、QTRとともに行き詰りました。

    熊谷

    熊谷

    3 5月 12 at 5:58 AM

  8. クマガヤさん、

    だめですか。僕もちょっと行き詰まった感じではあります。その理由が個体差なのかと考えていたところです(僕が使っているプリンターは普段クラスなどで使っているので比較的使われている物です)。

    僕も他の人が実際に行ったデジタルネガからの銀塩プリントを実際に目にした事はありません。ですので、実際にどれ位までできているのかというのは正直分かりません。

    ただカーボンプリントをしている人はジェラチンのサポートとして銀塩の紙を使ってプリントしています。つまりバライタ紙を使っている訳です(もっともマット系なのですが)。そう考えるとどこからこの問題が出てくるのかが不思議な所です。

    そして幾つか質問です:

    1) Yのlimitが45なのですが、それをもっと増やす事はできませんか?そもそもなぜ45なのでしょうか?
    2) プリンターの解像度が1440 dpiになっているようなのですが、2880 dpiで試してみましたか?
    3) プリンターのスピードはuni directionですか、それともbi directionですか?

    そして今HPのプリンター(z3200)を買う所です。もちろんこれはすでに出来上がったソリューションなのですが是非銀塩でテストをしたいと思っています。

    ICCのプロファイルを直接作る事は考えてみましたか?そちらにも進んでみたいと思っています。

    つよし

    p.s.: もしよければプリントを実際に見せてください!

    ツヨシ

    4 5月 12 at 8:52 AM

  9. 伊藤さま

    >僕も他の人が実際に行ったデジタルネガからの銀塩プリントを実際に目にした事はありません。ですので、実際にどれ位までできているのかというのは正直分かりません。

    そうでしたか。Piezographyなんかを見ていると、割とプロセスは完成しているような印象を受けていましたが、まだ一般的ではないのでしょうか。

    ご質問の件ですが、
    1)Yインクですが、伊藤さんもテストされていましたが、インク量がある程度以上になると遮光率は変わらない特性のようだったので、今回は上限を45%としました。物理的にもKインクの85%との合算になるので多すぎても問題になるかもしれませんので。
    このYインクの混合法はハイライト領域での粒状性悪化の改善に結構有効に働いていると思います(うまくごまかせているだけ?)EPSON純正ドライバーでもカラー調整でYよりのプリントになるよう調整しましたが、QTRの方が理想的に調整出来たようで、粒状性に関してはQTRに軍配が上がりました。

    2)解像度ですが、テストした結果、意外なことに2880dpiモードよりも1440-1440dpiSuperモードが綺麗でした。
    これはおそらくマイクロウィーブ(Super)の処理の加減なのだと予測しています。
    結局QTRはウィービング処理の品質が問題なのです。
    Royさんが自分の知り合いなら、とにかく印刷品質を何とかしろ!と要求するところですが(笑)
    本当にあと一歩のところなので、真剣に何とかならないものかと思います。

    また、最近のPiezographyデジネガプロセス紹介ページでも1440dpiモードを使えと書かれています。
    (この手法の内容そのものに関しては私はまだ何も分かっていませんが)

    Piezography Digital-Negatives
    http://www.piezography.com/PiezoPress/blog/piezography-digital-negative-update/

    3)スピードに関しては、常にUni-Direction を使っています。

    ICCプロファイルに関しては、QTRがあれば容易に作れますね。EPSONドライバーとICCプロファイルの組み合わせ(トーンカーブはやめる)が出来るんじゃないかと思いましたが、十分なDmaxを得るための露光を基準にすると、一発目のプリント(補正無し)でシャドーが完全に潰れてしまうので、階調の補正が出来なくなってしまい、あきらめました。

    現状、EPSONドライバー+トーンカーブでここまでです↓
    http://www.digital-negatives.jp/bb/phpBB3/viewtopic.php?f=16&t=453

    ワークショップの為に今月来日されますね。もしお時間があれば是非見ていただきたいです。
    別件ですが、19日は日本写真学院の銀塩デジタルネガのワークショップを受講します。

    熊谷

    4 5月 12 at 10:35 AM

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