Archive for the ‘コロタイプ’ Category
移動中

Sketchupで書いたスタジオの様子
今年はこれで6回目になるが、この12時間の飛行時間にはなかなか慣れない。なるたけ仕事を持ち込んで忙しくしている。
フィラデルフィアからは東京への直通の便がないため、乗り継ぎが必要になる。大体ミネアポリスかデトロイトで乗り継ぎをするのだが、その中継地点では必ずスタジオとのやり取りをする。スカイプ越しに最終的な確認と、僕の移動中待てない質問のやり取りなどをAnneとしていく。来年には僕が使っているデルタ航空の国内線にはWiFiが完備されるとの事。そうすればもう少しコミュニケーションが環境がよくなりそうだ。
国際線の飛行機に乗ってからは、スタジオのスペースのデザインを始める。最近ダウンロードしたSketchupという3Dのソフトを使い、改修されていない残りのスペースを描いていく。大体の寸法などを決めていき、どのように残りのスペースを有効に使っていくかを考える作業である。
このビルには大体35坪位のスペースに一階と二階と手がつけられずに残っているだが、今までは工具や機材そして建築用の資材で埋まっていた。そこにテンポラリーにでもこの春までにコンピュータールームを作れないかという事を考え始めた。今はギャラリーとコンピューターがある教室が兼ね合っているが、イベントの度にこのセットアップをたたむ必要がありなかなか大変な作業である。そしてこのコンピューターの部屋を分ける事によって、二つのクラスが同時進行する事も可能になる。そこで今月の頭にAlが中心となりボランティア4−5人に手伝ってもらい2日かけ完全に整理した。
そこにちょうどギャラリーのスペースがきれいになるのを見計らった様に、いつも大工仕事を手伝いをしてくれるMargeの都合がとれて、フィラデルフィア来ることになる。元々は違う所の作業をしてもらおうと思っていたが、新しいスペースを作る方に興味を示し、工事を始める。実際に発つ翌日まで彼女と工事の作業を進めていた。僕がフィラデルフィアを発ってからも滞在し自分でできる作業を進めている。日本に着いてからもSketchupで作った物を設計図として彼女とのやり取りに使い、お互いの考えている事を細かい所まで確認できる。
12時間後成田について早速便利堂の鈴木さんと東京駅で落ち合う約束をする。鈴木さんは今日まで東京で出張で、今夜京都に帰るという事で、この日と見計らって会う約束をしていた。9月にロビンと工房を訪れて以来の再会である、東京駅の構内の中華料理やで今までの進展の話しを聞く。いろいろな計画があるが、前回携わったデジネガの導入と、Library of Congressに所蔵されているプリントの複製を作るプロジェクトが話しの中心である。そして来月の半ばにはまた京都に訪れる事を約束。また楽しい滞在になりそうだ。
東京の実家に着いた頃にはフィラデルフィアのスタジオを出てきてから24時間が過ぎていた。

違う側面からのビュー
京都便利堂にて

今回テストしたClarence Whiteのイメージ。Photo by Robin Tsukada
今回の滞在中は山本さんが出張という事で、主に加藤さんと一緒にデジタルネガのテストの作業を進めていく
加藤さんは、もともと便利堂の中でオフセットを担当していたので、プリントの作業を数値化していくというのは比較的に感覚として分かりやすいのではということである。先週、アンドレアと一緒に便利堂を訪れた時に山本さんに紹介してもらい、今回付きっきりでQTRの仕組みなどを説明していった。
1日目は会社に着いた時には既に夕方になっていたので、とにかく朝クボさんの所でプリントアウトしたネガを渡し製版をしてもらう。先週からチャートを刷るのを担当している竹内さんや、製版を長く担当している中沢さんも会議に加わり、いかにコロタイプを刷っていく過程で,いろいろな要素があるのかという事を説明してもらう。普段印刷している人の間で使っている,ボキャボラリーや感覚に慣れるために、写真的な観念に置き換えたり、その仕組みを分かる為に気になる言葉を一つ一つ確認していく。
2日目は翌日に作った版を使い実際に印刷をしていく。竹内さんと加藤さんが一緒になりコロ機を動かし、用意された一つの版から一回刷と二回刷りのテストを刷っていく。先週のテストからカーブをはじき出したが,それは二回刷の物で行った。便利堂では数物をする時は二回刷りするのが当たり前になっているようで、これがコロタイプの宿命的な物であると説明をうけた。オフセットとは違い、最初に刷った物と200枚目に刷られた物ではかなりの濃度差が出るようで、これを順序逆に二度刷る事によって平均化しているのである。
竹内さんが作業を進めていく途中にどのような版が刷りやすいかという事を説明してくれる。乾いている版を水とグリセリンに浸けておくのだが,そのぬめり具合などを確認しながら版の具合を確認していく。どれ位固いインクが入り易いかという事で実際に印刷の善し悪しが決まる。そして実際にインクを入れてみて,その入り具合に寄って実際に刷る時にどのようにしていくかという事を決めるようだ。そしてインクの固さやそして版の濡れ具合に寄って,実際のプリントの濃度がどんどん変わっていく。今回のテストでは一つの版から多くても20枚位しか刷らなかったが,版画使われていく度に版の状況が変わり、それを判断し印刷する人がいろいろな方法で仕上がりを一定にするというものである。
この様に細かい説明を聞いていくと、あまりにもプリントの時点で自由自在に操る事ができ、このようにチャートを作っていく事すら意味のない様に聞こえてくる事が多々あるが、逆に言うといかに版の出来上がりにバラ付きがあり,印刷の時点でその版を補う様にプリントをしているかということがわかる。プラチナプリントする人のネガの調子にバラつきがあり、プリントの時点で露光時間やコントラストを変え悪戦苦闘しているという事と変わりはない。今回この様に話しを聞けば聞くほど、いかに安定した版を作るという事が大切で,それができていればある程度反復性のあるプロセスだという事がわかった。
3日目の午前中は、写真部の岩村さんも加わり、印刷された物をスキャンして実際のチャートのずれをまた見ていく。そのずれからトーンカーブをはじき出す事も説明する。実際にスキャンをして,いちいちグレーの数値を読み込んでいく作業である。最近知った方法でこのプロセスを自動化するスクリプトこのとを話したり,後は二つのトーンカーブを一つにまとめる方法なども紹介する。正直言ってフォトショップは普段から使っている人ほど熟知している訳ではないが、要所要所でこの様に便利な方法を押さえる為に常に情報を吸収している。
今回のテストの結果を見て,山本さんも早速プリンターを購入するという事を決めた。かなり期待ができるのでないかと思ってくれたようだ。今回この様にデジタルネガを使うようすると大きく3つの利点がある。まずはできてくる版が安定して,印刷の時点で苦労しなくてもいいという事。これは時間短縮につながり、もう少しコストパフォーマンスが高くなるだろう。そしてこの様にデジタルファイルで入稿できる様になると,世界から受注できる様になる。今までオリジナルを撮影するしか方法がなかったが今回の方法でその過程を省くことができる。これは新しいマーケットを開拓していくにはどうしても必要な事である。
そして、自分として興味があった所として、作業過程のいろんな条件を数値化して知ることができるという事である。今まで職人さん達が感覚的に分かっている事は経験上のカンでしか分からなかったのだが、その感覚を数値化する事によってもっと裏付けのある物にしたいと考えた。職人さんの感覚をいかに理解して,数値に置き換えられるか,又は置き換えられないかという事を見極めることができないかという思いがあり、先週山本さんに会い話しをした時にもコロタイプを作る過程でどのような不確定要素があるのか、そしてどれ位の変化をもたらすかという事を、夜居酒屋にいる短い時間で、自分なりに理解しようとした。もちろんコロタイプを長い間やっている訳ではないので,細かい所まで理解する事は到底無理であるが、今までいろんなオルタナティブプロセスをやってきた僕なりに提案できるものはある。
今回のテストでは時間がなかったが次回は使うdichromateを変えて階調をもっと広くすることができるか是非試してみたい。基本的にはammonium dichromateの方がコントラストが低く感光性が高いので、この辺はテストをする価値があると、素人ながら思う。この辺はこの秋にゴム印画などでテストをして,実際にできた物を見せる事によって,山本さんの協力を得たいと思っている。
この様にお互いの持っているノウハウを生かし、より高画質のそして合理化されたコロタイプを作りたいと思っている。と同時にコロタイプの新しい利用方法を色々模索して行きたい。

仕上がりを確認する竹内さん。Photo by Robin Tsukada
旅は続く
2つ目のワークショップにも人が集まり、とても楽しい時間が過ごせた。
この様に人とのネットワークができていくのもワークショップを教える楽しさでもあり、そして何より参加者が楽しんで新しい事や、考え方を学んでくれるというのが,うれしい事である。
翌日の朝には久保さんの暗室を借りてデジタルネガの出力をする。これは先週から行っている便利堂とのテストの物で、今日から京都に3日ほど滞在する。第一回目のテストが土曜日に帰ってきたのそれをスキャンしてトーンカーブを作っていく。実際はもう一回位テストをしたい所だが京都で同じプリンターを使って出力ができないという事で、かなりカンで幅広く用意する。そして今回はグレーチャートだけではなく、Library of Congressで見て来たClarence Whiteのイメージのネガも準備する。そもそも今回のデジタルネガのテストはこの写真をコロタイプで表現できないかというのがきっかけであり,便利堂に持ち込んだ話しである。
この春に久保さんと一緒に訪れた時に見せてもらった一連のClarence Whiteの写真がある。プラチナで作られた最終的なプリントもあれば、ベタとしてつくられたサイアノのプリントもあり、彼がプリント時点で何を考えていたのかという事をなぞれる様なほど、同じイメージにしてもバージョンが沢山ある。今回はこのコレクションのほとんどが解像度の高いスキャンされている状態であるというので、キュレータのVernaにデータをダウンロードさせてもらった。このようのにデータで入校できると便利堂の仕事の幅も広がるのではないかと思う。
その後には石川の珠洲に向かう。今回は参加者が集まらなかったが,蛸島の祭りを撮り行く予定である。前回は4×5のカメラでランダムに撮ってきたので,今回は白のバックドロップまで持ち込み,8×10で撮影を試みようと思っている。今回大阪で行ったアンドレアのワークショップで通訳をしながらポートレートについて学んだ事が沢山あり、とても役に立った。それを実際にこの撮影で生かすことができたらと思っている。
そして今回着いていくる事になったロビン。彼とは6月にフィラデルフィアを出てから久しぶりに会った。つい2−3日前に中国から帰ってきたばかりで、日本国内をあまり旅行した事がないというので一緒に来ることになった。実際は、また無茶な旅にかり出されるといった感じであろうか。
日本から長い間離れているということを感覚的に分った上で話せる人に会える事はそんなにない。その中でロビンは中国でも育ったことがあるので,ある意味「日本の感覚」から離れている所があり、とても気楽に話せる。実際に二人の会話なども英語でやり取りする事のほうが圧倒的に多い。会話のテンポ、考え方など、そして他の人と話す様にいちいちassumptionを確認する作業がなく、こちらの方が「感覚的」に近い物があるのだろう。
今日は一日中便利堂でQTRの使い方を教え、昨日入稿したテストの印刷の作業を見せてもらう。そして夜は出張から帰ってくる山本さんと鈴木さんを無理矢理に誘い、京都でのボーリング大会。今日も1日楽しみである。
一路、西へ
金沢から帰ってきてあまり休む間もなく今度は九州に向かう。
午後は京都で下車をし便利堂で鈴木さんをはじめコロタイプ印刷に関わっているスッタフに会う。スタジオを見学させてもらい技術的なことやこれからの企画でできそうな事をいろいろと話す。なんだかんだ言って3時間ぐらい長居をしてきた。
やはり便利堂の持っている技術の高さを実感する。みんなが職人としてやっている事に誇りを持って一生懸命に仕事をしているのには感心させられた。そしてここは本当に何から何までがアナログである。この時代ここまでアナログで大掛かりにできる所がすごいと思った。
そして便利堂は技術的にもいろいろ新しい方法を模索してコロタイプ印刷の新たな可能性にも挑戦している。技術の山本さんと話した事にカラーでのグラデーションの話があった。はやり写真を印刷する以上この問題は技術的に重要な点である。
そしてコンセプト的に重要な問題点もある。春にレクチャーに来てくれたJames Hajiackさんも言っていたがコロタイプは繊細な描写ができるが為に犠牲になった技法であるということを常に言っていた。とてもきれいに描写ができるが為にどうしても「高級印刷された複製」ということを逃れられなくなってしまう。
ここがフォトグラビュアーなどと差ができる所だろう。フォトグラビュアーなどは版画としての独自の良さという所から評価され利用されている。つまり元々印画紙でできている作品をフォトグラビュアーで複製を作ろうなどという考えは全く起こらない。グラビュアーでしかできない作品を作ろうというのがそもそもの狙いであるからだ。
そこがこれからコロタイプを使い写真を作っていく上で重要な課題になる。これは技術の山本さんも認識していることでありこれからの応用方法を考えていく人も作品のコンセプトとして必ず取り組むことになるだろう。これから答えを模索していく事になる。その為にJames Hajiackさんのところにコロタイプを学びに行こうと再度考えた。







