日本からの写真家達
なかなか踏ん切りが付かなかったが,夕方からミカさんとロビンとでNYに向かう。ChelseaにあるYancy Richardsonで瀬戸正人さんのオープニングがあるとのこと。セトさんとは去年の12月に帰った時に彼の新宿のスタジオでお会いしたのが初めてである。
前からセトさんの写真に興味があり会場でいろいろしゃべる。昔に作っていた50mぐらいある写真のことであったり、Place MをNYに進出できないのかなどと。いろいろと将来の事を話せて楽しい時間であった。
セトさんのオープンニングということで何人かの日本人と会う。コジマ君を始めNYで写真に携わっている人達である。去年のICPのオープニング以来のゴウ君とも久しぶりに会った。相変わらず写真活動を続けているようだ。何ともたくましい。
もう一人の写真家で最近あったのは菅原さんである。実際には一度も会った事はないが久保さんの活動を通して知っている人で、フィラデルフィアに訪れてきた。
ある朝起きてくると久保さんからメールが入っていた。菅原さんの泊まっているNYのアパートのインターネットのコネクションがなかなかつながらないので助けて欲しいという内容であった。早速朝菅原さんから連絡が入って来て電話越しにトラブルシューティング。
菅原さんはDCでのRobert Frankの写真展とPace McGillに写真を見せに今回NYを訪れているとのこと。DCに行くというので,その帰りにフィラデルフィアに寄ってはと誘う。
今回持って来ている久保さんの作ったプラチナのプリントを是非見せたいというので、Gallery 339のオーナーのMartinの所にも顔を出したらどうかと提案。プリントの枚数があまりないというようだが,こんな機会はあまりないので、とにかくMartinに電話をしてみる。Martinの方は問題なく、すんなりと機会を作ってくれた。
ギャラリーにより,お昼を食べてから僕のスタジオの方に向かう。スタジオの様子を見せてからいろいろなお話をする。菅原さんの活動の事や僕のやって来た事など。菅原さんも僕のスタジオの様に暗室とギャラリーなどが混ざっている所を作りたいと考えているらしい。これから何らかの接点が現れればと思う。
セトさんも菅原さんのこともCommercial Photoの雑誌がきっかけで名前を知る様になった。そして来月も訪れる久保さんもその雑誌を通して知る様になった事を考えるととても面白い。
今年会った綾さんや竹内さんも含め,アメリカでは今までなかったような出会いがこの頃増えている。今年の夏に帰った時には顔を合わせる人の数が増えそうだ。
久しぶりのプラチナプリント
人にプレゼントするプリントを作る為にクラスを教えた後、10時頃からプラチナプリントの準備をする。
久々に行うのでちょっと体がなまっているという感じであるが、薬品を一つづつ混ぜていく。最初はclearingに使うcitric acidとsodium sulfiteとEDTAを混ぜたもの。そして現像液として使うpotassium oxalateをpotassium carbonateとoxalic acidを混ぜといていく。pHを調整しながら比較的酸性の方にしておく。
いつもは紙を酸浴する時にはoxalic acidを使っていたがalt listでどちらかと言ったらacetic acidなどがいいと聞いた為,早速使ってみる事にする。どうやらoxalic acidを使うと化学反応でできた物はなかなか水に溶けにくい物らしい。僕が使っている紙は水彩画に使う為どうしてもバッファーが効いているため酸浴が必要になり、バッファーが強い時は像がどうしてもしまらなくなる。今回は2%溶液で試してみたが,5%ぐらいにして時間を短くしている人もいるようだ。基本的には紙はFabriano Artisticoでプリントしている。
そして最後に乳剤になるferric oxalateを混ぜる。この薬品は毎回混ぜる度に少し方法を変えていかに溶けやすくするかと試行錯誤している。今回は全てが溶けるまでmagnetic stirrerで混ぜてみた。量が少ないので蒸発しない様に温度を調節して、時間をかけ混ぜていく。この様に自動で回っているstirrerでもこの様に時間がかるのにてで混ぜていたらなどと考える。
なぜかこの薬品を混ぜるとプリントをするかという気になってくる。混ぜる薬品のなかで一番手がかかるからであろうか?そしてこの様に薬品を混ぜるのはある種儀式みたいな物で,その過程で心の準備をしていくみたいなものだ。
プリントは僕の友達の働いていた non-profitの法律事務所に寄付する物で、僕の友達に渡される物である。今はフィラデルフィアから引っ越してしまった為パーティーの会場に現れるか分からないが、彼を業績を表彰する時にギフトとしてプリントを作って欲しいと頼まれた。明日プリントするというのにまだフィラデルフィアの風景にしようか能登で撮ったものにしようか悩んでいる。
今日は一日中雨が降っていて真夜中をすぎて止みそうもない。明日は湿度が十分になっているだろう。明日はアシスタントのAnneが朝から手伝ってくれることになっている。
写真、アイデアそして人の行き来

蛸島のキリコ
この夏にまた日本に帰る事が決まった。
Andrea Modicaと一緒に大阪にある写真の専門学校でワークショップが決まったのである。8月の終わりに3日かけてポートレート実習とクリティークを中心にしたワークショップを行う。去年の12月に帰ってきた時に学校の校長先生に問い合わせてみたら、すんなりと企画を受け入れてくれた。この校長先生とは5年も前からNYでの研修の手伝いさせてもらった関係にある。
今年も9月に金沢/能登を回る旅行を計画していて,今回はAndreaを連れてのワークショップという形で参加者を募っている。去年参加した人の中には今回も来たいという人がいて,ちょっと思考の違ったものになるだろう。今までAndreaが教えて来たワークショップをとった人も参加をしてくれるかもしれない。
日本に帰った時には新井君を伝って,Andreaのアーティストトークなどを企画していもいる。もし金沢の旅行に人が集まらない時はもう一つワークショップなどできないかと、アイデアも練っている。Andreaも日本ではあまり知られていない中堅の作家なので,いろんな形で作品と彼女の事を紹介したい。
その一方、5月には久保さんがまたフィラデルフィアに訪れる予定だ。今回はRon Reederが教えるデジタルネガのワークショップをとるのが目的。そして前回来た時にinformalな形で試みをしてみた久保さんのワークショップも行ってみようと思っている。久保さんが長い間やって来たプリントに対しての理解みたいな物をこちらの人と共有できたらと考えている。
そして訪ねる所としては、Rochester。OstermanやRonと会って、見せてもらえる物を見てこようとしている。RochesterにはGeorge Eastman HouseやRITなども訪れるところがあり盛りだくさんになりそうだ。Andreaから紹介してもらったRITで教えているWillyもRochesterに来たら必ず連絡してくれと心強い。
そして南に位置するDCに行っては前回訪れる事ができなかったLibrary of Congress。キュレーターのCarolとVernaには5月に来る事を伝えているので、そこでLibrary of Congressが持っているプリントなどを見せてもらう予定。そして今回のワークショップでNational Archiveで働いている人に知り合い、2年近く前に会ったキュレーターのSarahを通してNational Archiveをきってのお宝を見せてもらうように話しを進めてもらっている。どうなるかは分からないが,何を見せてもらえるのかが楽しみである。
そして5月のワークショップに呼ぼうと思っている人に便利堂の山本さんもいる。今回のデジタルネガのワークショップで学べる事は沢山あり、これから便利堂のコロタイプの利用価値がとても高まると思う。今、実際の物を見てもらうため、ワークショップを教えるRonのネガを便利堂に送る様に手配をしている。
このところやっと人と人と結ぶ事のが形になって来た。前からも言っているが、こちらで作ったネットワークを日本に持っていったり,又は日本から来た人に繋げるのが仕事だと思う様になってきた。この様に実際の形で実ってくると充実感がとてもある。
WetplateワークショップとAIPAD
Kerikが来てから一日かけてワークショップの準備をする。コロジオンや現像液を混ぜたりと準備をしていく。実際にシッパンで写真を撮ったのは去年の秋以来の為いろいろおさらいをしていくみたいな物だ。Kerikが来る度にいろいろワークショップでは聞けない様な細かい質問や問題解決の方法を学ぶ。
お昼にはテスト撮影が終わり準備のめどがついたため二人でNYに向かう。AIPADの会場にギリギリ間に合ったという感じであった。さすがに終わる直前というので会場はかなりすっきりしている。どんな物がでているかきょろきょろ見て回る。
毎回AIPADに来る度に会う人がいる。一番最初に会ったのはフィラデルフィアのコレクターで去年の栗田さんのショーでもプリントを購入してくれた人である。彼女は日本に旅行をするのがとても好きで、今年に計画している旅行の話しをする。
次に会ったのはGeorge Tice。彼とは5年くらい前にワークショップをとってからこのようにAIPADで顔を合わせてはいろいろ世間話をするようになった。どうやらGetty Museumが彼のアーカイブを買おうとしているらしく二年半位準備をしているとのこと。毎回会う度にいろいろなプロジェクトの話しを聞く。いつもの様に「相変わらずトイレで写真を撮っているの?」と冗談を言っていくる。僕の顔よりもワークショップでプリントしていたイメージの方を覚えてくれているようだ。
Kerikと話しているうちにあるギャラリーの悪い話しを聞く。そこで紹介されていた作家の作品が作家の知らない所で取引されていたようで、支払いはもちろんの事,売れたという事すらも長年知らされていなかったらしい。このようにアメリカのギャラリーの周りでうろうろしているとこのような話しを時々聞く。半分恐ろしいとも思い,その半分これもゲームの一部かとあきれる。ギャラリーというビジネスはこのようなモデルしかないのだろうかと考えさせられた。
そしてNYに着いてから2時間後のバスでフィラデルフィアに戻る。プリントとプロセスについてのレクチャーで面白そうなので顔を出してみようと思っている。ただ明日は朝の10時からという事で朝がとても早い。そして午後からは生徒を連れてギャラリー巡りをする予定である。明日も長い一日になりそうだ。
フィラデルフィアでのダゲレオタイプワークショップ

Chester County Historical Societyで見せてもらったハーフプレートのダゲレオタイプ
久保さんが帰ってから新井君とひたすらワークショップの準備をする。機材を作る為に木材を購入してから残りは実際に必要な物を作っていく。主にはsensitizingに使う箱を二つと換気用のfume boxを作るのに時間をかける。比較的簡単にできるかと思ったら実際には細かい事で時間がかなりかかった。しかしお互いの持っている物を持ち合っていろいろ問題を解決していく。
薬品の調達の問題があったり、準備にはあれこれと時間がかかったが、なんとかワークショップまでこぎ着けることができた。Moore College of Art and Designという地元の大学の生徒を招いてのワークショップである。生徒と先生が13人位集まり半日をかけてダゲレオタイプを作る事を学ぶ。成功した人もいたが像がでてこなかった人もいたりとまちまちであった。失敗も成功のうちで,皆とても記憶に残るワークショップになってくれたようだ。
そしてその夜には新井君のレクチャーに思ったより多くの人が来てくれる。デモが行われる日曜日もとても反響があり,デモが行われたギャラリースペースはほぼ満杯になった。レクチャーに来ていた人も参加したが、この日の為に南はDCから北はNYから2時間位かけて来てくれる人も多数いた。
さすがにいろんなプロセスを紹介するのが僕たちの役割というのが浸透してきたのだろうか、新井君のレクチャーやデモを見てみようと結構集まってくれた。イベントの情報がここまで広がってくれるのはとてもうれしい事だ。
準備の段階ではいろいろな問題があり、やり残した事もあったが、今年の秋に向かっての大きな一歩になったと思う。これで新井君もダゲレオタイプで作品を作るにおいてフィラデルフィアをベースにすることができるだろう。これからの展開が楽しみである。








