フィラデルフィア写真紀行

写真センターの運営や作家活動から、アメリカの写真事情や文化の違いまで…

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京都便利堂訪問

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Niigata, 2010

ワークショップの準備に時間がかかりもっと早く訪れる事ができると思ったが、実際に京都に着いたのは木曜日の昼を過ぎていた。一昨年の秋に訪れてから、毎回日本に来るときは時間を作って便利堂に寄っている。水面下で進んでいる今後のプロジェクトの為という事もあるが、便利堂のコロタイプをもう少し効率よく作る事ができないかという事を考えている。

その一貫として工房ではデジタルネガを導入するテストの手伝いをしている。今まで職人さんの勘に頼っていた製版のプロセスをデジタルネガを使う事によって安定したジェラチン版を作る事と作業の合理化をするのが目的である。今回も前回同様デジタル担当の加藤さんとネガ作り、製版そして印刷と一連の作業を一緒に進めていく。その傍ら工房長の山本さんもいたため、実際に立ち会える所は顔をだしてもらい、テストの過程に加わった。

今回は小さいながらもプリンターを導入したという事で便利堂さんにあるプリンターのテストを進めていく。新しく作ったプロファイルを早速インストールし、新しいチャートを数値を変え刷っていく。このようなテストをするときはオーバーとアンダー物を含めると実際にどのように変わっていくかという事が目に見えとても役に立つ。そういう意味でも分かっていても使える物と使えない物をも作っていく。

次の日には出来上がってきた版を使い実際に刷って版の出来具合を確かめる。コロタイプはこの印刷の時点での変化の要素がとてもあり、オペレーターがどのようにインクを入れるかなどで同じ版からまったく濃度の違うプリントができてしまう。もちろんここがコロタイプの特徴で短所でもあるが長所でもある。あまりにも自由度が高く、元々オフセットの経験がある加藤さんもこのような基準を作る事が無駄だと思っていたほどである。しかし基準的なネガができていればそれにこした事はないし、そうする事によっていちいち苦労しなくてもある程度のプリントができると考えている。

加藤さんと食事をしていた時に話していた事だが、全ての仕事が100%のものを要求される訳ではないと常に思っている。80%でいい物もあれば100%のものを作るべきの仕事もある。実際に便利堂の仕事でも利幅の幅がかなりあるようだ。実際の数字はよくわからないが、僕の予想としてはどうしても数を刷る物は自社で売る商品を作らない限り作業の工程上なかなか採算が合わない。その一方美術品の複製を作る一点物などは利幅が高く時間もかける事がでるのではないかと思う。これからコロタイプが生き残っていくにはこのような一点物の印刷をもっとやる必要があり、そこでこそ職人さんの持っている技術としても、そしてビジネス的にもコロタイプの長所が生きてくる。このような住み分けをできる様にするにはどうしても安定した版を作る事が必要になる。デジタルの安定さを使い、80%でいい物をいかに難しくなく作る事をめざす。

前回も感じていた事だが、この様に職人気質ある所で作業をしていくと、数値的な裏付けがある理論と人間の長年培われてきた経験や感覚という物が相反するというダイナミックが生まれる時がたまにある。実際に便利堂で作業をしている時は、一つの結論や意見が出たときに実際にどのようなモードで考えているのかという事を考え、人の意見を聞くようにしている。なにもどちらが万全という訳ではなく、いかに状況によってこのような考え方を使い分けるかという事がいつも重要だと思っている。この辺りのバランスをうまくとる事を心がけなければならないと思う。

さすがに版から印刷までどうしても一日かかる作業なので、2日では時間が足らず最後の結果までは見ることができなかった。ただ2日目のテストを見ての工房の人の話しを聞いていると、どうやらいい方向にすすでいる様な感触が得れたので、今回はここまででいいのではないかと思う。後は春に来た時にどれ位進んでいるかに興味があるところだ。

Written by tsuyoshi

1月 28th, 2010 at 9:37 am

社会科見学

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日本に着いてから早速ミカさんと一緒に出版社や出版に関係している人に立て続けに会う。

いろいろな立場の人から話を聞き日本での写真集出版の事情をリサーチするのが目的である。具体的な数字、ビジネスの内容や何を考えているのか、そして僕たちがどのようなことができるのか、などということをざっくばらんに話す。感触としてはどこも肯定的で協力してくれるようであった。

そんな事を二人で4日ほど行った後、月曜日には久保さんも引き連れて京都の便利堂に向かう。便利堂の鈴木さんには前々から久保さんとミカさんとで訪れる予定を伝えておいた。そこにミカさんの紹介で奈良でギャラリーを営んでいる野村さんと京都の大学で勉強している山下さんとが合流する。

お昼を食べて便利堂に訪れた時には2時で、それから山本さん達が行う工房の説明などを兼ね3時間位お邪魔をする。来る度に便利堂の技術そしてそれに対しての誇りなどに感心させられる。いろんな過程がありそれぞれの部門で働いている人と話すと、自分のやっている事に誇りを持っていることがすぐわかる。

その後、時差ぼけの睡魔に襲われながらも鈴木さんと山本さん達と一緒にお酒を飲み、技術的なことや、どのようにしてCollotypeの存在をもっと知ってもらうかという事を延々と話す。席での山本さんがCollotypeについて語っている顔が忘れられない。これだけ自分のやっている仕事を熱心に語れるという事ができる人が今の社会にどれくらいいるのだろうか?

鈴木さんには来年の3月に行われるAIPADの見学を兼ねてアメリカに来てほしいと誘い、山本さんには5月に行われるデジタルネガのワークショップに誘いをかける。このような機会で便利堂も学べる事は沢山あり、そして僕が協力できることもある。

その次の日には大阪にでてThird Gallery Ayaの綾さんを3人で訪れる。綾さんとはNYのICPで行われたオープニングで一度お会いしている。綾さんの所では前ミカさんが紹介してくれた日下部さんの作品を見せてもらう。サイトでしか見た事なかったが実際に見てみるとますますフィラデルフィアに持って来れないかと思う。近いうちに実現したい。

このように写真を通してアメリカと日本の間のこの距離を縮められないか?人、技術、物、そしてアイデアの行き来をもっと活発にできないかということをいつからかよく考えるようになった。そこにはどちらの世界も、言葉や文化の違いを障害とせず自由に行き来できる僕の役割がでてくる。そしてこれがミカさんと行おうとしているビジネスのコンセプトでもある。

新大阪の駅で久保さんとビールを飲みながら少し個人的な事まで話をする。今回は久保さんと過ごせる時間が沢山あり、仕事の事だけではない話をする余裕も出てきた。

そして久保さんと別れた後一路九州へ向かう。